死別同士の戦友
私たち夫婦は最初の配偶者をお互い30代で亡くしている。
死別後の人生をそれぞれ別々の都市で歩んできた私たちが知り合ったのは夫は死別後9年目、私は3年目だった。
死別後3年目の私は喪失感から抜け出せずに同じ思いの方と縁を持ちたくて、インターネットで見つけた「死別の会」で、様々な会員の方とインターネット上だけの交流が始まった。
当時 私は3年たっても死別後の苦悩の真っ只中で、夫はそんな私に死別の先輩としてたくさんのアドバイスをくれた。
そして夫自身が35歳で前妻と死別してから、出世をあきらめ子育ての為 ネギをしょって帰る日々から その後たくさんの資格を取り、今では押しも押されぬ立場で仕事をしていることに感銘を受けた。
死別後 自分を立て直してそんな風に生きれる姿は私には夢のまた夢だった。
死別の会では年に一度オフ会と言うものがあり、その時は上野だったかに全国から会員が集まり、30人弱が来ていたと思う。
メールだけでやりとりしていた夫とも面識してみたいと思って私も参加した。
そこからだんだんと意気投合してもちろん再婚などとは考えてもいなかった当時の私だったが、夫とその後 ◯県と東京都で3年間、毎週末に会う遠距離恋愛を経て再婚することになった。
お互い結婚が早かった私達の子供達が成人して就職したタイミングだった。
私たち夫婦の形は以上のようなものだがやっぱり、私たちは戦友のようなものだなと、今の介護状況を見ても思う。
夫は私の前夫の祥月命日に仏花を買ってきてくれるような優しい人だった。
どちらかと言えば男っぽい私の性格に比べて、細かいところによく気づく料理の上手い人である。
その夫が再婚後5年目に1回目の脳出血で高次脳機能障害になり、性格ががらりと変わってしまい、とても神経質な人になってしまう。 (元々神経質な性格だったのか)
私は夫にとても神経を使うようになり
そこからだんだんと夫婦もぎこちなくなっていった。
でもそれは今振り返れば私が彼の苦悩をわかっていなかったらからだとも思う。
当然ながら自分で体験しない事はリアルにはわからない。
それで言えば 私はきっと今、戦友である彼に恩返しをしているのではないかなと思う。
死別後 生きる屍であった私を救った命の恩人に。
1度目の脳出血から11年後の2020年に今回の2度目の脳出血を起こし、そこから私が1人で在宅介護を始めた訳で
心を込めてかどうかはわからないが一生懸命に対応する私の姿を見ていて彼の心も今では少し柔軟になってきたのではないかと感じる。
男として仕事も盛りだった時に身が不自由になったことの悔しさ。
妻にも本当の意味ではわかってもらえない葛藤が私の行いで和らいでいるのではと。
在宅介護当初は「夫婦なら介護して当たり前」と言っていた夫は今は小さな事にも絶えず「ありがとう」と言うような人になった。
人は生きているうちにお礼を言えたり謝れたり出来るのは幸いなことだと私は思う。
死んでから後悔しない為に。
この世に未練を残さないように。
今の私たちが
戦中なのか戦果なのかはわからないけれど
共に戦友ならばこれからをどう生きるかと思います。
私は世話好きだけど心の中は厳しい江戸っ子。
夫は真面目で正義感の強い甘ったれの三男坊。
そんな夫に今は寄り添う戦友でもあり
厳しくなれない母親でもあると思う自分です。
=====================